《はじめに:国際的な潮流》
再生可能エネルギー(以下は再エネと略する)を企業が利用したいというニーズが高まっている。これは、投資家要請によって企業に環境に関する質問書を送付し、回答を評価している国際 NGOであるCDP(旧カーボンディスクロージャープロジェクト)の影響、加えてCDP 評価や投資家から「パリ協定を守る世界において生き残る企業か」という判断基準となっている企業版2℃目標(SBT, Science Based Targets)を設定した場合、電力を再エネ化することが必須となってくること、そして再エネ100%調達を宣言するRE100に参加する企業が増えていることなどもその要因となっている。これらSBTやRE100などの2℃目標達成のための企業の行動リストは、国連気候変動枠組み条約によるNAZCA(Non-State Actor Zone for Climate Action、非国家主体による気候のための行動)プラットフォームに統合されて、その進展を追跡されている。
これらの国際的な持続可能の格付けは、非財務情報の開示に関してより一貫したものになりつつある。さらに近年、化石エネルギーの価格の変動は激しくなり、再生可能エネルギーをよりコスト競争力のある新電源として使い始める企業がますます増えている。エネルギーを多様性に増やすことにより、将来的にエネルギー政策または制度の変更による財務リスクを避けることが期待されている。
(出所) CDPホームページ等よりMt.Stonegate Green Asset Management作成
《二酸化炭素排出の削減分野で話題になっている国際的なイニシアチブについて》
企業行動:SBT
SBTは、「Science-based Targets」の頭文字を取った略称で、日本語では「科学的根拠に基づく目標」とも呼ばれています。すなわちSBTイニシアチブとは、その名の通り、企業に対し「科学的根拠」に基づく「二酸化炭素排出量削減目標」を立てることを求めているイニシアチブです。2015年にCDP,国連グローバル・コンパクト,WRI(World Resources Institute),WWF(World Wide Fund for Nature)が共同で立ち上げ、運営する。今年の3月11日までに、日本は39社でトップ、続いでアメリカ38社、イギリス16社と続く。また、世界的には食料品製造業が、日本では電気機器業及び建設業が多いという。
企業行動:RE100
RE100とは、事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟するイニシアチブで、「Renewable Energy 100%」の頭文字をとって「RE100」と命名されています。2014年に発足したRE100には、2019年3月20日時点で、世界全体で166社が加盟。この166社には、食品世界大手スイスのネスレ、家具世界大手スウェーデンのイケア、アパレル世界大手米NIKEなど、日本でもよく知られれている企業が数多く含まれています。
《どのようにして100%グリーン電力を達成することについて》
2018年のアップルの公表された報告書によれば、再エネ電力の調達戦略が、複数の手法の組み合わせることが分かる。自家消費及びPPA以外に、一部の地域においてはEACs(属性証明書。例えばI-REC等)を購入することもみられる。又、 認証業界の大手SGS社の場合においては、米国とヨーロッパ以外、世界中でI-RECを調達しているという。更に、2018年11月中旬に発表されたRE100年次報告書をみてみると、アップルまたはSGSだけではなく、RE100のメンバーは、グリーン電力戦略の実際の行動において、エネルギー属性証明書の購入は50%近くを占めていることがわかる。
もちろん、RE100のメンバー企業の中、再エネの実現目標をいつに定めるかということや、実現手法も各社様々です。
さらに、RE100の年次報告書によれば再エネの調達方法は、大きく分けると3つの手法があります。一つ目はグリーン電力証書の購入、二つ目はグリーン電力事業者との購入契約(PPA)の締結。三つ目は再エネ由来発電設備を設置し自家消費となる。ところが、この3つのうち、目標実現に要する時間が短いのはグリーン電力証書です。そして、もう少し直接的な手法もあります、それはPPAです。つまり再生可能エネルギー由来の電力を購入する契約を締結します。さらに進むと、自社が再生可能エネルギー発電所を所有し、運営する形になります。米国のアップルやグーグルなどの取り組みはこれに当てはまります。
これら複数の手法を組み合わせることはもちろん、一旦グリーン電力証書を用いて調達比率を高めた後、他の手法の比重を増やして行く企業もあるということです。
《突き当たる課題とは》
ところが、再エネ100%の目標達成は、一筋縄ではいかないようだ。インベントリ報告において地域別にスコープ2排出量を見ると課題が見つかった。欧米の拠点では、ロケーションベースとマーケットベースのスコープ2排出量に明らかな差がみられる事から、欧米では再エネ電力の活用が著しく進んでいることが分かる。ところが中国やインド、インドネシアといったアジアの国々における2つの排出量を比べると、再エネ電力をほとんど調達できていないことが分かる。
いずれも日本企業が多く進出されている地域でもある。従って、今後グローバル日本企業はアジアで再エネの利用を拡大する場合、どう対応すればよいかというと、僭越ではあるが、以下いくつかの提案をさせていただきたいと存じます。
1. 他の市場とは異なり、電力市場の自由化されるまでに、地域の政策又は規制にかかってい
る。又これらの政策又は規制は、資金の参入及び装置容量に深い影響を与えている。その
ため、まだ初期の情報収集の段階にある企業には、東南アジア市場の向こう三年の変化を
注意深く観察することをお勧めします。
2. 欧米企業と比べるとどうしても日本企業の方がグリーン電力への取り組みの比重が比較的
に軽いと思われます。ですから欧米のグローバル企業のグリーンエネルギーに対する取り
組みを参考にされることをお勧めします。しかし、結果だけを見るのではなく。結果とプ
ロセスに注意を向けていただきたいと思います。そうするならば新たな発見が可能となる
ことでしょう。
3. 各企業にとってコスト面で再生可能エネルギーの設備投資を行うのは現実的ではない、今
すぐには難しいというのが一般的である。前述もありましたように、各企業の環境への取
り組みにおいては、I-REC等のグリーン電力証書の購入がやはり敷居が低いものとなるこ
とから、手軽なグリーン電力証書から理解することをお勧めします。その後、長期的なプ
ランに移行することができます。
4. グローバル日本企業が拠点を置く東アジア、南アメリカ、インドなどの発展途上国の大部
分では、電力市場が制限されているか電力自由化がされてまだ日が浅いため、該当地域の
規制が複雑です。ですから、不用意に手を出すことにはリスクが伴います。その代わり
に、専門のコンサルティング業者と相談することをお勧めします。
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